
「あの人が休むと止まる」。この状態を直したい、という相談は多いのですが、いきなりマニュアルを作り始めるとたいてい途中で止まります。何が属人化しているかを、先に目に見える形にしていないからです。
順番は、棚卸し → 仕分け → 置き場所づくり。この3ステップで進めます。
1. 1週間、「誰に何を聞いたか」を書き出す
最初にやるのは、記録を取ることだけです。仕組みも作りませんし、誰かを責めもしません。
工場長・生産管理・現場のリーダーが、1週間だけ次を書きます。
- いつ(日付・時間帯)
- 誰に聞いたか(名前でよい。社内の記録です)
- 何を聞いたか(「HDシリーズの材料の在庫」「あの治具の場所」など短く)
- 待った時間(すぐ返ってきた/30分待った/翌日になった)
紙でもチャットでも構いません。大事なのは、聞いた側が書くことです。聞かれた側に書かせると、忙しいので抜けます。
1週間で30〜80件くらい溜まります。ここで初めて、質問が特定の1〜2人に集中している事実が数字で見えます。「なんとなくAさんに頼りがち」が「今週47件中31件がAさん」になると、社内の話が早くなります。
2. 「台帳に置けるもの」と「判断が要るもの」に仕分ける
集まった質問を、2つの箱に分けます。ここが一番大事な工程です。
台帳に置けるものは、答えが1つに決まる質問です。
- 物の場所(治具、予備部品、清掃用具)
- 商品の仕様(この製品の板厚、この材料の代替品)
- 過去のトラブルとその対処(去年の夏に出た同じ不良)
- 在庫の数と入荷予定
これらは、書いておけば誰でも答えられます。人に聞く必要は本来ありません。
判断が要るものは、状況によって答えが変わる質問です。
- 「この納期、受けていいか」
- 「この不良、止めるか流すか」
- 「明日この人を別ラインに回していいか」
こちらは台帳にしても答えになりません。必要なのは、判断の材料を揃えてから聞ける状態にすることです。「どう思いますか」ではなく「負荷はこう、在庫はこう、で受けられますか」と聞ければ、答える側の負担は大きく下がります。
3. 「聞けば返る形」に置き直す
仕分けたら、台帳側から手を付けます。全部を一度にやらず、件数の多い順に上から5つだけ整えてください。
置き方のコツは3つです。
| やること | 理由 |
|---|---|
| 写真を必ず1枚つける | 場所や治具は、文章より写真のほうが速く伝わる |
| 1件1ページにする | 長いマニュアルは読まれない。探せる単位で切る |
| 更新日を入れる | 古い情報を信じて動くと、聞くより事故が大きい |
判断が要るものは、台帳ではなくチェック項目にします。納期回答なら「その日の負荷」「材料の入荷」「必要な人の有無」の3つを見てから答える、と決める。判断そのものは人に残しますが、材料を集める作業は誰でもできるようにします。
やってはいけないこと
ベテランに「全部書き出してください」と頼まないでください。 何を書けばいいか分からないので進みません。1で集めた「実際に聞かれた質問」を渡して、それに答えてもらう形にすると、同じ時間で数倍進みます。
もう一つ。棚卸しの結果を人事評価に使わないでください。1回でも使うと、次から誰も正直に書きません。
質問の集中先が見えて、答えが台帳に載ってくると、次に効いてくるのは「その台帳に聞けば返ってくる」状態です。AI工場長 becon は、こうして整えた在庫・仕様・トラブル・物の場所を読んで、スマホから話しかけた質問に答えます(数字を書き換える操作は提案までで、実行は人が画面で承認したときだけです)。どこから棚卸しするかの整理は、無料の現場診断でご一緒します。


