
ERPの見積を取ったが、数百万円という金額を前に話が止まっている。中小の製造業ではよくある状態です。
ただ、止まっている理由は金額だけではありません。入れる側の土台が揃っていないと、いくら払っても同じ問題が残ることを、現場の人はなんとなく感じ取っています。実際、導入が失敗するときの原因はシステムの機能ではなく、この土台の側にあることがほとんどです。
先に整えるべきものは3つです。
1. 商品マスタを1つにする
まず、扱っている品目の一覧が1つあるかを確認してください。
多くの工場では、見積用のExcel、製造指示の帳票、在庫表、それぞれに品目の一覧があります。しかも中身が微妙に違います。「材料A」「A材」「A(新)」が同じものを指していたり、廃番になった品目が片方だけに残っていたり。
ERPは、この一覧を「正しいもの」として取り込みます。ずれた一覧を入れると、ずれたまま高速に動くシステムになります。 導入後に「数字が合わない」と言われる原因の多くはここです。
やることは地味です。品目コードを振る。現場の呼び名は別の欄に持つ。単位を1つに決める。廃番を落とす。これだけですが、100品目でも数日はかかります。逆に言えば、ERPを入れなくても今日から始められる作業でもあります。
2. 数字の置き場所を1つにする
次に、在庫・製造実績・不良の数字がどこを見れば分かるかを1か所に決めます。
- 在庫の増減を書く場所
- その日何をいくつ作ったかを書く場所
- 不良・廃棄を書く場所
紙でもExcelでも構いません。大事なのは「ここを見れば分かる」が1つに決まっていることです。3か所に散っていると、どれが正なのか誰も言えません。この状態でERPを入れると、移行のときに「どのデータを持っていくか」で必ず止まります。
ここで一番抜けやすいのが、不良・廃棄の記録です。捨てた分が記録に無いと、在庫は必ず実物より多く見えます。欄を1つ足すだけなので、先に作ってください。
3. 誰が承認するかを決める
3つ目は仕組みではなくルールです。発注・在庫の調整・製造計画の変更を、誰が承認するのか。
今は「担当者がその場で判断している」工場が多いと思います。それ自体は悪くありませんが、承認者が決まっていないと、システムを入れたときに次のことが起きます。
- 誰でも数字を変えられる設定にしてしまい、後から追えなくなる
- 逆に承認を厳しくしすぎて、現場が使わなくなり紙に戻る
決めるのは3つだけです。何を承認の対象にするか(金額や数量の線引き)/誰が承認するか(役職ではなく人)/その人が休んだ日は誰か。 紙に書いて貼っておけば十分です。
この3つ目を先に決めておくと、後でどのシステムを入れるにしても、設定がそのまま決まります。
順番と、費用の考え方
3つは商品マスタ → 数字の置き場所 → 承認ルールの順で進めます。マスタが揃っていない状態で記録を1本化しても集計が合いません。
そして、この土台づくりはERPを入れると決めていなくても無駄になりません。 整えた品目一覧と記録の置き場所は、どのシステムに移っても使えますし、そもそも整えた時点で「在庫が合わない」「発注が担当者任せ」の何割かは軽くなります。
AI工場長 becon の標準版(初期構築)は、ちょうどこの土台づくりの範囲を扱います。商品マスタの整備(最大100SKU)、データ移行の支援、在庫・製造・品質の記録の置き場所、そこにAIから聞ける状態まで。ERPそのものではありませんし、自動発注や会計連携は含みません。ERPに進む前に土台を作る、あるいは土台だけで足りるかを確かめる位置づけの投資だと考えてください。
自社の場合どこまでが土台づくりで済み、どこからERPの領域なのか。含まれるもの・含まれないものの一覧は、サービス説明資料にまとめています。


