
発注をベテラン1人が担っている工場は多いと思います。その人が休むと止まる、辞めると誰も引き継げない。これは能力の問題ではなく、判断の根拠が本人の頭の中にしかないという構造の問題です。
引き継げる形にするには、「勘」を「手順」に置き換えるしかありません。順番に見ていきます。
手順1:正味の持ち高を出す
いま何個持っているかは、棚にある数だけでは分かりません。次の式で出します。
正味の持ち高 = 手持ち在庫 + 入荷予定 − 受注残(引き当て済み)
この数字を英語の頭文字で NFP(Net Flow Position)と呼ぶこともありますが、名前はどうでもよく、大事なのは3つを足し引きしてから判断することです。
- 手持ち在庫:いま棚にある数
- 入荷予定:発注済みでまだ届いていない数。発注済みを忘れて二重発注するのが、よくある失敗です
- 受注残:受注済みで、まだ出していない分。これを引かないと在庫が多く見えます
材料であれば、受注残の代わりに製造計画から出した所要量を引きます。「来週SKU-12を300個作る予定なら、材料Aが何kg要るか」を製品構成から出して差し引く形です。
手順2:帯のどこにいるかを見る
出した正味の持ち高を、品目ごとに決めた在庫の帯(赤・黄・緑の信号)に当てはめます。緑なら何もしない。黄・赤なら発注に進みます。
ここまでで、「発注するかどうか」の判断から人の裁量が抜けます。
手順3:発注量を決める
いくつ頼むかは、次の3つで決まります。
- 帯の上限まで戻すのに必要な数
- 仕入先の最小ロット・箱単位
- まとめ発注による単価の差
多くの現場は2と3を優先しがちですが、まず1を出してから、2と3で丸めるという順にしてください。逆にすると「箱単位だから」という理由だけで在庫が増えます。
手順4:根拠を残す
発注のたびに、なぜその数にしたかを1行残します。「帯の上限まで戻すため200kg、最小ロットは50kg単位」で十分です。この1行があると、引き継ぎのときに手順を再現できます。
属人化が残る場所を見分ける
手順にしても、次の3つは人の判断が残ります。ここは残していい部分です。
| 判断 | 人が残る理由 |
|---|---|
| 仕入先の選定 | 品質・関係性・過去のトラブルが絡む |
| 特急対応の可否 | 相手の事情と交渉が要る |
| 新規・仕様変更品の初回発注 | 実績データが無い |
逆に言えば、繰り返しの定番品の発注は、ほぼ手順に移せます。ここを移すだけでも、担当者は判断が要る仕事に時間を使えるようになります。
手順を紙に落とす
最後に、上の手順1〜4を1枚の紙にしてください。画面がなくても、Excelでも回せる形にしておくことが引き継ぎの条件です。仕組みは、紙で回るところまで単純にしてから道具に載せるほうが定着します。
AI工場長 becon は、この計算を品目ごとに毎日行い、発注が必要な品目と数量を「提案」として登録します。実行されるのは、人が承認画面で内容を確認して承認したときだけです。手順の全体像と、標準版に含まれる範囲は説明資料にまとめています。


