
「在庫表を見て発注したのに、棚に行ったら無かった」。中小の製造現場でよく聞く話です。多くの場合、原因はシステムでも人の能力でもなく、数え方と書き方が揃っていないことにあります。棚卸しの回数を増やしても、この3つが揃っていなければ数字はまた離れていきます。
1. 単位を1つに決める
同じ材料が、伝票では「kg」、現場のメモでは「袋」、Excelでは「ケース」で書かれている。この状態だと、誰かが頭の中で換算した瞬間に誤差が入ります。
決め方は単純です。在庫を数えるときの単位を1つだけ決め、他は全部そこへ寄せる。現場が実際に数えている単位(袋、巻、枚)に合わせるのが続きます。伝票が別単位で来るなら、受入のときに1回だけ換算し、以後は換算しない。換算の回数を減らすほど、ズレは減ります。
換算の係数(1袋=20kg など)は品目マスタに書いて、頭の中に置かないでください。「あの材料は袋で25kgだったはず」が食い違うと、原因を追うのに半日かかります。
2. 入出庫を書く場所を1か所にする
在庫が合わない工場では、記録がだいたい3か所以上に散っています。受入の伝票、製造日報、そして誰かの手帳。3か所あると、どれが正なのか誰も言えません。
入庫と出庫を書く場所を1か所に決めてください。 紙でも構いません。大事なのは、その1か所を見れば増減の全部が分かる状態にすることです。他の記録は「元の伝票」として保管はしても、在庫の計算には使わない。
このとき、記録に必ず入れるのは4つだけです。
- いつ(日付)
- 何を(品目コード)
- いくつ(決めた単位で)
- なぜ(受入/製造で使った/不良で捨てた/返品)
「なぜ」を書いていない工場は多いのですが、これが無いと差異が出たときに追えません。特に捨てた分を書く欄を作ってください。不良や端材で消えた分が記録に無いと、在庫は必ず実物より多く見えます。
3. 品目名を1つに統一する
「材料A」「A材」「Aざい」「A(新)」が同じものを指している。よくあることです。人は文脈で読めますが、集計はできません。
品目コードを振り、呼び名は別欄に持つのが現実的です。現場の呼び方を禁止しても続きません。コードで管理し、画面や帳票には呼び名も出す。これで現場の会話も帳票も壊れません。
順番が大事
3つを同時にやろうとすると、たいてい止まります。単位 → 記録の場所 → 品目名の順で進めてください。単位が揃っていない状態で記録を1本化しても、集計が合いません。
そして、直した直後に一度だけ全数の棚卸しをして、そこを起点にします。過去の差異を遡って合わせようとしないでください。合いません。今日の実物を正として、そこから記録を積むほうが早く安定します。
差異が残るなら、原因を分けて見る
3つを直しても差異はゼロにはなりません。残った差異は、原因ごとに分けて眺めると次の手が見えます。
| 差異の出方 | よくある原因 |
|---|---|
| 特定の品目だけ大きい | 単位の換算、または端材・不良の未記録 |
| 特定の曜日・シフトで出る | 記録が後回しになっている時間帯がある |
| じわじわ全体的にずれる | 数え漏れ、または保管場所が複数ある |
在庫の数字が信用できるようになると、発注の判断が「担当者の感覚」から「数字」に移せます。AI工場長 becon は、この整えた記録をもとに、切れそうな品目を先に知らせ、発注を提案するところまでを担当します(発注そのものは、人が承認してから実行されます)。何から手を付けるかの整理は、無料の現場診断でご一緒します。


